ホーム > お役立ち情報 > 挿入工程自動化への道 - 成功のポイントとFUJIのソリューション –

1. はじめに

近年、世界的にさまざまな分野でロボットの導入が進んでおり、特に新型コロナウィルスが流行した2020年以降 急加速しています。製造業においては 2025年には、出荷金額ベースで2020年の2倍以上になることが予想されています。なかでも電子部品実装関係は、IT投資や自動車の電装化などを背景として好調に推移しており、ラインの増設だけでなく、その後工程に残る手挿入作業の自動化への投資も増加しています。

手挿入作業の自動化への投資が増加する理由は、品質や生産性の向上を目的としたものに加え、慢性的な人手不足や人件費の高騰など人材面の課題解決や 予測できない突然の市況変化への対応といったリスクマネジメント策があげられます。

本稿では、手挿入作業の自動化に興味をお持ちのお客様や自動挿入機の導入を検討されているお客様向けに、現在の挿入機のトレンドとロボット技術、そして、自動挿入機を選定する際におさえておきたいチェックポイントをロボットメーカーの目線でご紹介します。

2. 挿入工程を自動化するロボット

現在、基板組立工程で使用されている挿入機は、大きく分けて、直行型XYロボットタイプと、多関節ロボットタイプの2種類のロボットがあります。

それぞれのメリット、デメリットは以下のようになります。

タイプ メリット デメリット
直行型XYロボット 位置決め精度が高い
段取り替え性がよい
設置面積が大きい
複雑な動作が苦手
多関節ロボット 動きの自由度が高く、
さまざまな工程で使用できる
立ち上げ、移設時に費用が掛かる
位置決め精度がXYロボットより落ちる

基板組立工程では、操作方法がチップマウンター(実装機)に近く、高速、高精度で段取り性もよいことから、直行型XYロボットタイプの挿入機が主流となっています。

3. 手挿入工程自動化への不安

手挿入工程のように、これまで手作業でまかなえていた作業をロボットに置き換えて自動化する場合、明確な導入効果を求められるため、慎重に検討しなくてはなりません。そのため、導入をためらわれることも多いでしょう。

私どもが、これまで自動挿入機の引き合いをいただいたお客様に、導入するにあたって不安を感じた点をお聞きしたところ、大きく3つに分類されることがわかりました。


自動挿入機の導入時に不安を感じた点

① 維持管理面
自動機に関する知識がない、専門部署がない、使いこなせるか

② 自動化率
自動化できるのは定型部品だけではないか、特注の異形部品を自動化できるか

③ 汎用性
部品変更時、装置移設時の容易さ、費用


現在のように多品種生産が常態化するなか、自動化できる範囲と汎用性に不安をもたれるのは当然です。特殊な治具の使用や特殊な部品を使用する生産であればなおさらでしょう。

自動挿入機はロボットの一種です。近年のロボット技術の進化は目覚ましいものがあり、性能も数年前と比べて大きく向上しています。では、現在の自動挿入機は、こうした不安をどこまで解消できるのでしょうか。ここからは弊社の製品を例にあげてご説明します。

4. FUJIの挿入工程自動化ソリューション

① 維持管理面

設備を導入する際、メーカーから派遣されるエンジニアが据え付けを行います。多関節ロボットの場合、装置を設置した後、SIerと呼ばれる有資格者が、数日間かけて動作設定、生産立ち上げまで行うため、工程変更や移設が大変というイメージを持たれているかもしれません。

一旦導入した設備は、長い期間使用されます。安心して使い続けるためには、生産の立ち上げやプログラムの作成・編集は、お客様自身で行える必要があると考えます。

弊社の自動挿入機は、直行型XYロボットタイプ、水平多関節ロボットタイプともに座標指定でプログラミングできるため、お客様で簡単に作成・編集が可能です。また、初めてロボットを導入されるお客様向けのトレーニング制度やオンライン学習システムなど、サポート体制も整っています。

② 自動化率

せっかくロボットを導入しても、自動化できる部品が限られていては、生産性と品質における効果は十分に享受できません。自動化が難しい理由として、そのままでは自動機に供給できない荷姿とハンドリングが難しい形状があげられます。

例えば、納品時に簡易的なガタの大きいトレイに並べられている部品や、袋の中にバラで入れられて納品される部品です。通常、このような部品の挿入作業を自動化するためには、専用トレイやスティックに詰め替える必要があります。

弊社の挿入機ラインナップは、充実した供給ユニット、ハンドリングツール、画像認識システムで、幅広い荷姿、形状、サイズに対応しており、高い自動化率を実現しています。

③ 汎用性

最近では、一台のロボットや一つの生産ラインで、複数種の部品を生産できるよう考慮された製品が増えてきました。しかし、それだけでは長期間使用する設備としては十分とは言えません。電子機器のライフサイクルは短命化しており、以前と比べライン構成の変更や移設をする機会が増えています。そのため、都度 発生するエンジニアの派遣費用に不安を感じるお客様も少なくありません。もし、自社のスタッフで、簡単に機種変更やライン構成の変更ができるとなれば、こうした不安も解消されるのではないでしょうか。

弊社の挿入機は、段取り替え性に加え、装置の移設・立ち上げをお客様自身で行えるようデザインしており、導入後に発生するコストに頭を抱えるようなことはありません。

一般的なロボットで必要となるエンジニア作業

5. 自動化で失敗しないためのチェックポイント

それでは、手挿入工程の自動化で失敗しないためのチェックポイントをお客様が最も不安を感じる「自動化率」と「汎用性」、そして、自動化を検討されるお客様が期待される「生産品質」というキーワードに沿ってご説明します。


■ 自動化率

・供給ユニット類の充実度
挿入部品は、テープ、トレイ、スティックのような自動機への供給を想定したパッケージばかりではなく、先にお伝えしたようなガタの大きいトレイやバラ部品など、手作業を前提とした荷姿で供給される部品があります。高い自動化率を実現するためには、どのような荷姿、どのくらいのサイズまで対応した供給ユニットがあるか確認しておきましょう。

・ハンドリングツールの充実度
自動化率を上げるためには、供給ユニットと同様にハンドリングツールも非常に重要です。挿入工程では、ノズル吸着では把持できない異形部品や大型で重量のある部品が多くなります。標準的なツールで把持できる部品のサイズ、重量に加えて、カタログではわからないカスタムツールの対応可否や実例についても確認しておきましょう。

・画像認識システムの性能
画像認識システムは、メーカーによって性能が異なります。得意、不得意や対応できる部品サイズは、確認しておきましょう。できればメーカーに依頼して、購入前に実機を使い対象部品を自動化できるかテストしておくことをおすすめします。


■ 汎用性

・段取り替えの容易性
ハンドリングツール自体の汎用性と交換しやすさは、段取り替え工数や装置の稼働率に影響する重要なポイントです。
挿入機に搭載されたハンドリングツールやユニットの交換方法は、ロボット種により大きく異なります。しかし、実際の作業性は、操作してみないとわかりません。ここは面倒がらずにメーカーのショールームや工場に出向き、実機を操作しながら確認することをおすすめします。

・移設、工程変更時の作業性と費用
挿入機を選定する際、忘れてはならないのが移設や工程変更時の作業性と費用です。
移設や工程変更時にメーカーやサービス代理店から有資格者の派遣が必要になる場合は、その都度 費用が発生します。挿入機を選定する際は、初期投資だけでなく、導入後に必要な費用の有無も確認しておくとよいでしょう。


■ 生産品質

・品質チェックシステムの有無
自動化を検討されるお客様が、もっとも期待されるのは、品質の向上ではないでしょうか。
部品の外形より外に飛び出ている挿入ピンは、搬送中に外部からの衝撃でピッチが規格外になったり、変形や欠損したりすることがあります。自動運転下では、こうした規格外の部品の使用を回避する品質チェックシステムは必須です。また、正しく挿入したことの確認や、挿入した部品の倒れや抜けを防ぐための機能も重要です。

・見える化システム
機械には思わぬトラブルが付きものです。エラー発生状況や進捗状況などを見える化するシステムの有無は、管理面の工数に関わる重要な機能です。自社の実績管理に必要な指標の表示有無や自社システムとの連携可否も必要に応じて確認しておきましょう。

ここにあげた3つのキーワード「自動化率」「汎用性」「生産品質」のチェックをする際に意識していただきたいことが一つあります。それは、現在の生産の効率化、品質の向上に加えて、自社で生産している製品は、将来どのように変わるだろうというように、少しだけ将来のことを考えるということです。業界紙に載っている技術トレンドや取引先との商談から、何かヒントが得られるかも知れません。

6. FUJIの挿入機ラインナップ

それではここからは、弊社が取り扱う2つのタイプの挿入機をご紹介します。


■ 直行型XYロボットタイプの挿入機 sFAB(エスファブ)

・部品種が多く、高速・高精度が求められる生産向き
直行型の弱点であった部品対応力を強化し、最大200mm×200mm、質量200gまでの部品をハンドリングできます。多彩な供給ユニットとハンドリングツールを組み合わせて、高速、高精度な挿入と汎用性の高い生産を実現します。

■ 水平多関節ロボットタイプの挿入機 SmartWing BA

・2、3点の部品の自動化、直行型XYロボットの補完機に最適
スカラロボットにコンベア、カバー、2台のカメラをパッケージ化した基板組立ロボセルです。パッケージ製品のため、導入時の面倒なシステムインテグレーション作業を削減できます。
一般的な多関節ロボットと異なり、動作の設定は、ロボットティーチングではなく、チップマウンター(実装機)と同じ座標入力でプログラミングできます。そのため、移設や工程変更時に自社で作業を行えるため、導入後に発生するSIerの派遣費用を抑えられます。

新たな設備の導入には不安が付きものです。特に過去に自動化を試みたが思うように効果が出なかった経験をお持ちのお客様は、必要性を理解していても導入に踏み込めないかもしれません。そのようなお客様はぜひ一度弊社にご相談ください。ここ数年で大きく進化したロボット技術と充実したサポート体制で、お客様に最適なソリューションをご提案します。

また弊社では、自動挿入可否のテストも受け付けています。
自動化を検討している部品と基板をご提供いただければ、お客様の条件に合わせて自動挿入可否の確認を行います。
詳細につきましては、弊社営業までお問い合わせください。

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